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プロローグ
「猫は三色しか、色がわからないんですよ」
幼い頃、NHKの子ども番組を見ていたとき、どこかの博士が言った。
「青、緑、あとおそらくは黄色の、三色だけ。猫は元々暗闇で生活する動物なので、ほとんど色を識別する必要がないんですね。ただ、それじゃあ蛇や毒虫といった外敵に気付きにくいから、青、緑、黄色は見える色として残したというわけです」
ショックだった。世界はこんなにも色で溢れているのに、猫にはたった三色しか見えていないのか。あたしは飼い猫のリリーを腕に抱き、彼女を憐れんだ。
リリーには、どんなふうに世界が見えているのだろう。大好きなピンク色のボールは? おやつの缶詰は? あたしの顔は……? あたしの唇は、緑に見えているのだろうか。肌の色は、黄色? それって、まるで宇宙人みたい。
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