赤いチューリップ

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 好きな人がいるのに告白出来ない。その相手は同じ高校に通う1つ上の男の先輩だ。その人とは何時も通学のときに電車で会う。決まって前から5両目の車両に乗っている。私はそれを知っているから合わせて同じ5両目に乗る。会話を交わしたこともないし、挨拶さえしたことがない。でもちょっと癖のある黒い髪に背が高い先輩はモロ私のタイプだ。顔はイケてるわけではないと思うが口角がキュッとあがったところがいい。  ある日、先輩が友達と会話する声が聴こえてきた。 「あいつ妖精が見えたんだって」  先輩の友達が可笑しそうに言う。 「マジ?寝ぼけてたんじゃねえか」 「ああ、俺もそう思う。この世に妖精なんかいるわけがない」  電車は高校のある駅に着いた。同じ制服を着た男女が一斉に電車から降りる。私は改札を抜けて階段を下りる。外に出ると深呼吸してから考えた。
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