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固まる桃子に、律斗は気まずい様子で立ち上がると、そのままリビングの引き戸に手をかけた。
「俺、もう寝るよ」
「う、うん…」
何も考えられず、呆然と座り込んでいると、律斗があっ、と何かを思い立ったように振り返った。
「今度の日曜、どこか出掛けるか」
「え…」
「予定ある?」
「な、ない…」
「じゃあ、行きたい所考えといて」
「う、うん」
パタリと、リビングの引き戸が閉まる。
その瞬間、桃子はパタリと布団に倒れ込んだ。
今頃になって心臓が暴れ出し、全身がカァッと熱くなる。
あの時、キスをされるのではと思った自分が死ぬ程恥ずかしかったのだ。
つい先程、電話で逸子に指摘された言葉を思い出す。
手を出すわけがない、と再度注意された気がして、苦笑した。
(分かってるよ、りっちゃんが私の事異性として見れないって事くらい。これからは、今までとは違った明るい関係になれるよう、頑張るだけなんだ。亮太君の気持ちを断って、今、ここにいるんだから)
桃子はさっそく携帯を取り出す。
強い決意を胸に、桃子はお出掛けスポットを必死に探したのだった。
◇ ◇ ◇
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