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「あ、紗々羅ちゃん」
私を見上げた彼女の表情は頬を赤らめて、目を潤ませている。それでいて、どこか満足気だ。
そして、それを別の言い方に変えるとしたら……
彼女はとても…“キラキラ”していたのだ。
「さっきは…ありがとうね」と彼女はそのキラキラの笑顔のまま言った。
そして、上半身を逸らして私の向こうに俊太の姿を見つけると、思い出したように言った。
「そうだ、川島くんは大丈夫だったの!?」
彼女の顔はまだキラキラのままだった。
この顔を俊太が見たら、さらにショックを受けるのではないだろうか。
俊太の顔を覗こうとする彼女の動きに合わせて、私は鏡合わせののような動きで俊太の姿を隠した。
「紗々羅ちゃん?」
戸前さんが怪訝に思うのは当然だったが、私の方もどうしていいのかわからない。
すると「何やってんだよ?」と俊太が私の肩を掴んで揺れる上半身を固定した。
そして、俊太は私の前に出ると「俺なら大丈夫です。すぐに止まりましたから
」と鼻を軽く摘んだ。
…鼻血の方は大丈夫かもしれないけど……
私が俊太の背中を見上げるとその背中が急に振り返る。
「マジで、大丈夫だから」
俊太は私にも念を押すように言った。
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