プロローグ

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俊太は私の幼馴染。 同い年で家も近所で、幼稚園から小学校、中学校まで同じ。 おまけに母親同士が気が合うので、幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた。 だけど、私は… 中学の頃から、一方的に俊太から距離を置くようになっていた。 この高校入試だって俊太と一緒にならないために、懸命に努力して志望校よりワンランク上の学校を受験したのだ。 自分でも無茶をしたと思うが、明確で強固な目標があれば実力以上のものが発揮できるのだと実感した。 それなのに… そんな私の努力も虚しく、 気付けば一緒に入試会場にいて、 こうやって… 一緒に入学式に出席しようとしている。 「お母さん、お願いね」 母へのお願いはダメもとだ。それでも私だって(わら)にでもすがる思いだ。 「…変な子ね。せっかく一緒に入学できたんだから、うれしいことじゃない。お母さん、中学からのお友達少ないけど、俊太くんがいるからホッとしてるのよ。紗々羅だって俊太くんがいれば安心でしょ?」 そもそも私に友達なんてほとんどいないし、安心よりも不安の方が勝っているなどとはさすがに母には言えなかった。 「…とにかく、極力話しかけないようにしてよね!」 「やーよ。二人で並んで記念写真撮るからね」 「絶対やめて!」 私は思い切り母を睨みつけた。
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