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私がムキになって大声を出すと、母は呆れた声でため息をついた。
「何ムキになってるのよ。ホントにおかしな子ね。入学も卒業も幼稚園の頃からずっと記念に写真撮ってたじゃない。何を今更」
すると、ため息をついていた母の顔が急に明るくなった。
「そんなこと言うなんて、もしかして紗々羅、俊太くんのこと意識してるの?」
「もう最低…。私、入学式行かないから!」
私はそう叫んで二階に上がったが、当然、欠席など許されるはずもなく、数時間後、私は新生活をスタートさせる東城聖学園の正門に立っていた。
新しい制服、新しい靴、新しい鞄。
小学一年生の時となんら変わらない。
不安よりも期待が勝ってわくわくしてドキドキする。
……そうなるはずだったのに、
今、私の胸の中には期待に交って灰色の不安がどんよりと広がっている。
それはきっと、先程から感じる視線のせいだろう。
校門を通過する生徒や保護者がじろじろと私たちを見つめていく。
「紗々羅ったらこんな日になんて顔してるのよ」
能天気な母親に「誰の娘だと思ってるの? もともとこういう顔でしょ」と、私は唇を尖らせた。
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