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「紗々羅ちゃんは昔から可愛かったけど、最近はめっぽう美人さんになっちゃったわね」
そう言って母の隣で私を見つめるのは俊太のお母さん。
昔から私の母とは気が合うようで、何かとつるんでいるが、見た目も内面も私の母よりずっと上品で、どうしてうちの母と気が合うのか私には幼い頃から謎だった。
私がこんな態度なので、おばさんに気を遣わせてしまった。
「そんなことないですよ」と苦笑いで謙遜したが、彼女は私が言い終わらないうちから「ね、俊太もそう思うでしょ?」と、自分の息子に同意を求めた。
上品でも人の話を聞かないところは…母とそっくりだった。
「…さあ? 別に昔と変わらねえだろ」
桜の花びらが揺れる、春の淡い景色の中でこの声を聞くことになろうとは……。
私は心の中でため息をついた。
「なによ、俊太ったら照れてるの?」
空気の読めない彼の母親がクスクスと笑う。
ああ、やっぱりこういうところも私の母にそっくりだ。
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