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「…なんだよ…コレ……」
俊太の声がわずかにかすれた。
「…ミサンガ。昨日、部活が終わってから戸前さんに作り方を教わったの。私のは一番簡単にできる編み方だけどね。私、不器用だし、その一本作るので精一杯だった。戸前さんは本当にすごいよ」
彼女に対するその気持ちは嘘じゃない。みんなを応援する気持ちや小松原先輩を思う気持ち、その中で私のことまで気に掛けてくれて…本当に彼女は素敵な人だ。
「…一本って……お前が作ったのって…この一本ってこと…?」
今度は私から彼女の名前を出したのに、俊太は彼女のことには触れなかった。
「そうだよ」と返事をした。
「本当は夕べ渡すつもりだったけど…なんだかそんな雰囲気じゃなくなちゃったし、今日も渡せないと思ってた。渡すつもりも…無くなりかけてたけど……それじゃあ私だけズルいなって思って……」
「ズルい?」
「戸前さんは私に気持ちを打ち明けてくれたし、小松原先輩は私の気持ちを受け止めてくれた。二人とも真剣に私に向き合ってくれたのに……私だけ何もしないなんて……やっぱりズルいと思って」
「…小松原さんが受け止めた…お前の…気持ちって…?」
俊太の声が辿々しくなった。
「他に…好きな人がいるって……伝えたの」
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