想いをカタチに

25/31
前へ
/651ページ
次へ
「…ワルイ。そういう意味じゃなくて…。…謝んなよ。俺が…言わせなくしてたんだろうし……」 俊太は一瞬顔を伏せた後、顔を上げて私と目を合わせた。 「…ただ、俺が紗々羅の口から聞きたかっただけ」 …私の口から……? 「…テーピングとミサンガも……マジで嬉しい。ありがとな」 その言葉が胸の奥に直接注がれたみたいに、身体中が熱くなった。 喉元まで押し上げる激しい鼓動に、喉が詰まって頷くことしかできなかった。 「先行ってるぞ」 俊太は力強い足取りで駆けて行った。 その後ろ姿を見つめながら、私はその場に座り込んだ。 試合を前に全力を出し切ってしまったみたいだった。 「…ダメダメ。これから、これから!」 私は独り言で気合いを入れ直すと、立ち上がって俊太の背中を追いかけた。
/651ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加