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「…ワルイ。そういう意味じゃなくて…。…謝んなよ。俺が…言わせなくしてたんだろうし……」
俊太は一瞬顔を伏せた後、顔を上げて私と目を合わせた。
「…ただ、俺が紗々羅の口から聞きたかっただけ」
…私の口から……?
「…テーピングとミサンガも……マジで嬉しい。ありがとな」
その言葉が胸の奥に直接注がれたみたいに、身体中が熱くなった。
喉元まで押し上げる激しい鼓動に、喉が詰まって頷くことしかできなかった。
「先行ってるぞ」
俊太は力強い足取りで駆けて行った。
その後ろ姿を見つめながら、私はその場に座り込んだ。
試合を前に全力を出し切ってしまったみたいだった。
「…ダメダメ。これから、これから!」
私は独り言で気合いを入れ直すと、立ち上がって俊太の背中を追いかけた。
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