想いをカタチに

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「やっぱり……」 その人物を見つけた時、思わず呟いていた。 「…貸してください。私がやります」 私は小松原先輩の前で手を伸ばした。 「なんで…言ってくれないんですか?」 私の練習にも付き合ってくれて、いつも私がテーピングを巻いていた足首に、小松原先輩は自分でテーピングを巻こうとしていた。 “おにいちゃん”と“私”。“キャプテン”と“マネージャー”に改めて戻ったのに、先輩が私にそんなことまで遠慮なんてされてしまったらどうしていいのかわからない。 「…言おうと思ったけど、そしたらアイツの方が先に紗々羅に声掛けてたし…タイミング逃しただけだよ」 「だったら…その後すぐに声掛けて下さいよ。もう時間もないですし」 私が言うと先輩は私を見つめ小さく微笑んだ。 「…ま、そうすべきだったけど……紗々羅に見惚(みと)れてた」 「ええ?」 「ああ、変な意味じゃねえぞ? 俺以外の奴も…ちゃんと紗々羅のこと見てたんだな…とか。紗々羅が本当に俺たちのために頑張ってくれてたんだな…とか。紗々羅がマネージャーとして…本当に頼りになる存在になったな……ってさ」 私にとって最高の褒め言葉だった。 胸の中を熱くし、頬を上気させた私に、先輩は持っていたテーピングを差し出した。 「頼んでいいか?」 「…もちろんです」 私はしっかりと頷いてテーピングを受け取った。
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