想いをカタチに

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小松原先輩が立ち上がると同時に、前の試合の終了を知らせるホイッスルが辺りに鳴り響いた。 みんなでグラウンドを振り返ると、大きな歓声があがっていた。 どちらのチームが勝ったのかは一目瞭然だ。負けたチームの姿は他校であっても見るのが辛い。 これから約90分後には東城聖学園も、勝者か敗者のどちらかになる。 それを考えただけでも胸の中が締め付けられる思いだった。 私たちはグランドのベンチに移動した。 グラウンドの土が太陽の光を反射して、一帯が眩しかった。 小松原先輩の声掛けで、ベンチの前に部員全員で円陣を作る。 普段、マネージャーはその姿を外から見ているのだが、今日は小松原先輩が私たちにも円陣に加わるように最後に声をかけてくれた。 「戸前と紗々羅も入って」 それを聞いた瞬間、戸前さんの目は潤み、彼女は言葉を詰まらせていた。 …みんなが待っている。 私はまるで動けなくなったような彼女の手を引き、小松原先輩のところへ急いだ。
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