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母親たちのはしゃぐような笑い声が響く。
その両脇で、子供たちが笑っていないのはどうなんだろう。
「ねえ、もう行ってもいい?」
その場の空気に耐え切れなくなって私が言うと、俊太も同じ心境だったのか一人先に歩き出そうとする。
母たちは慌てて私たちを引き留めると、正門の前に私と俊太を強引に並べて立たせた。
その横を新入生が私たちを横目に次々に通り過ぎていく。
このままここで長居をしては、さらし者にされるだけ。
二人の母の気の済むようにここはなんとかやり過ごすしかない。
「撮るなら早く撮って。みんなの邪魔になるから」
私は俊太の横で身体を強張らせながら催促した。
「わかったからもう少しくっついてよ。何よそのよそよそしい距離は」
母がしかめっ面で私を見る。
これはよそよそしい距離ではなく、"適正な距離"なの。
私は心の中で訴えながら無言で母を睨んだ。
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