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すると俊太が急に距離を縮めてきて肩がぶつかった。
驚いて隣を見上げると、俊太の顔がずいぶん高い位置にある。
「…早く終わらせたいんだろ?」
「…うん」と私は俊太から顔を逸らし俯いた。
「だったらこのまま正面向いて笑った方がいいぞ」
俊太がそう言った瞬間、真正面の母が「ほら、笑顔、笑顔!」と自分が満面の笑みをつくって私たちに声を投げる。
「そうそう、紗々羅ちゃん笑って笑って。ほら俊太も!」
まるで合いの手を入れるようにおばさんも母に寄りそう。
「あの二人、誰よりも楽しそうだな」と俊太が口をほとんど開かずに言った。
私はため息をつきながら「理解できない」と呟いた。
「笑わねえと終わんねえぞ」
俊太はそう言いながらも自分はクールな表情を決め込んだ。
私は俊太が覚悟を決めたのを見て正面を見て何とか笑顔を作った。
それをチャンスとばかりに母がスマホを私たちに向ける。
「はい、チーズ!」
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