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それを手に取ると、急に立っているのも辛くなり、ベッドに腰を降ろしてそのまま上半身を折り曲げて横になった。
入学式に撮った…俊太とのツーショットの写真……。
二人を取り囲む桜がきらびやかに咲き誇る中で、その場を早くやり過ごそうと、無理やりつくった二人の作り笑いが滑稽に浮かび上がっている。
それが可笑しくて唇の隙間から小さな笑いがもれた。
なのに…
そのすぐ後で、目頭が熱くなる。
瞼の淵に溜まった涙がみるみるうちに視界を歪ませ写真の中の二人の表情が見えなくなった。
涙の理由はわからなかった。
ただ胸が苦しかった。
その時、呼吸が止まりそうになるのを阻止するように、ベッドに投げ出していたスマホが振動した。
その振動が着信のものだとわかり、身体の向きを変えて枕の反対側へ手を伸ばすと、寝返りを打った表紙に瞼から涙が零れ落ちた。
それを拭き取りながらスマホを覗くと、スマホの画面に浮かんでいたのは……
小松原先輩の名前だった。
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