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5. その後
百万円は入ったが、寿命が一時間縮まった感覚が、まるでない。一体、誰がどのように、私の寿命を切り取ったのだろうか。
この商品を取扱している会社の連絡先が載っていたから、問い合わせてみた。
「私は神です。私があなたの寿命を切り取りました」
そんな風に、電話の向こうの人は言う。話の意味が分からない。直接会って話がしたいと伝えると、住所を教えてくれた。
その住所に行くと、神社があった。誰もいない。設備は、鳥居と賽銭箱と小さな社しかない。もう一度住所を確かめたが、やはりここだ。神と言っていたから、ここなのだろうか。
賽銭を入れて、お参りしながら言ってみた。
「来ましたが誰もいません。電話で話していた住所はここでよろしいのでしょうか」
その瞬間、晴天の空から突然雷が落ち、神社の大木に直撃した。大木は存在感を示しながら、最初はゆっくりと、次第にスピードを上げて、社と賽銭箱と山井あやの上に倒れた。山井あやは、それからすぐに絶命した。
山井あやの寿命が、一日縮まってその日になったのか、それともその日よりずっと先だったのか、定かではない。
ただ言えるのは、命をお金で売買するなど、軽々しくやるべきではないということだ。きっとどこかで罰が当たるに違いない。
(完)
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