3.杉(28歳 会社員)

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 出張に出かける日、  みんな新しい庭で、十分に距離を取って見送ってくれた。 「気を付けて」「行ってらっしゃい」と声をかけてくれたのに応えながら、 ふと思いつく。 「壮史!」 俺のでかい声に、壮史が「えっ、何?」と驚いている。 「夜、壮史の歌が聞けないのが淋しいから。あれ、動画にしてどっかに投稿してくれんか。全国どこでも見られるように!」 「なっ、杉さん!!」 泡を食ったようにオロオロしている壮史に司が、 「あれやっぱ壮史なん? やっべえ、俺も全部きちんと聞きてえ!」 と叫んだ。 「まさか、あの夜中のやつ? あれCDじゃないの?」 「壮史君ミュージシャンだったんだ!!」 遥香さんと志摩さんも、それぞれ離れた場所で、きゃあっと声を上げている。 「え、いっいや、そんな。俺……! もー!杉さん!!」 壮史の慌てた声をバックに、「行ってくるなー」と出来るだけ呑気な声を出した。 俺は、役割を果たすのが好きだ。 なぜならそれは全部自分が選んだ役割だから。 ドマーニのみんなに依存しているのは俺の方だ。それでも。 何かできることがあるなら。 喜んで、何でもしてやろうと思うのだ。 (続く)
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