1.志摩 (20歳 学生)

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  走って自分の部屋に飛び込んで、マスクを掴んで台所へ駆け込んだ。 泣きそうになって、「いけない」と我慢する。涙入りの料理はダメだ。    買ってあった卵と牛乳を全部使って、秘蔵のホットケーキミックスを全部ボウルにあけた。  今はどこのスーパーでも品薄だから、大切にとっておいたものだ。  でも使いたかった。全部使い切りたかった。    山のようにパンケーキを焼いていく。    部屋に大切にとってある地元から届いた近所の養蜂所さんのはちみつ。あれも持ってこよう。  少しは感染予防になればいいのに。効くかどうかは分からないけれど、美味しいのはたしかだ。    涙をこらえながらフライパンを振るう。    もう一つのフライパンで、ソーセージやコーンも炒める。    なにかせずにいられない気持ちってあるんだな、と初めて知った。  そしてこれをみんなで一緒に食べることができないことを、とても残念だと思った。
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