2.壮史 (21歳 学生 就活中)

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2.壮史 (21歳 学生 就活中)

 このウィルスは、今までにどれほどの人の運命を変えただろうか。  そしてこれから、さらに様々な人の運命を変えるはずだ。    部屋の床に寝ころんだまま窓から、無駄に青い空を眺めてそんなことを考える。  無為だなと思う。    一か月前はもっと楽観視していた。今だけだ、と。  二か月前は確実に他人事だったと思う。  もっとさかのぼって、年が明けたころなんか、完全によその国の何かでしかなかった。「へー」みたいな。  これが俺たちのそういう意識の低さに対する罰なのだとしたら、これはもう仕方がないのかもしれない。そう思えるくらいに、ここ数か月で自分も世の中も価値観がどんどん変わっていった。  当たり前が当たり前じゃなくなり、違う「当たり前」が構築されていく。 今まで一番大事にしていたことは全部二の次三の次だ。 「やばいな」  呟いたところで、どうにもならない。  こうやって一人で呟いている奴がどれくらいいるんだろうか。  きっと山ほどいるのだろう。
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