1.志摩 (20歳 学生)

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 私にとってそれは「庭園」であったらしい。    母の影響で無類の映画好きを自負しているし、読書も料理も好きだ。  あんまりおしゃれなエリアにはないこの家では、美味しいレストランに出向くのにはちょっとした気合が必要で。  デートや女子会ならともかく、自分一人のためにそこまで行こうとは思えない。それなら自分で作った方が楽だ。  そんな事情もあった。    元来、うちの中で手を動かす仕事が好きだし、アウトドアには向いていない質だった。  今年に入って突然、世の中に未曽有の伝染病が流行した。  その病気はあっという間に世界に広がり、猛威を振るった。感染拡大とそれに伴う医療の崩壊を防ぐために、政府は自粛を呼びかけ、皆ができるだけ自宅で過ごすようになった。  私の通っている大学も休校になり、ほぼ一日家にいるという生活スタイルが当然になったとき、正直、自分はさほど困らないのではないかなと思った。    録画してある映画は溜まっていたし、まだ作りたいレシピも山ほどある。本はこの家の居間に沢山あった。古いものだから、多少かび臭いがそれだけ我慢すれば読めないということはないだろう。    登山やサーフィンが趣味の友人や、飲み会に命かけてるって感じのクラスメイトに比べたら、私の毎日はあまり変わらないだろうと思っていた。
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