1.志摩 (20歳 学生)

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 それは突然やってきた。  家に籠りはじめて2週間ほどたった時だった。いつものように料理を作って残った分は食堂に置いておく。  こうしておくとここに住んでいる他の誰かが食べる。  ここはいわゆるシェアハウスだ。  玄関を入ってすぐに大きな土間があるから住人は茶化して『メゾン・ド・マーニ』なんてひどいダジャレで呼んでいる。  本当は竹下壮というがだれもその名前で呼んでいない。    平常なら居間に常に誰かがいるこの家も、今は居間に集わないことがルールになっている。  今は同じ家の中にいるのに、みんなSNSでやり取りをする。その感じにもだいぶ慣れた。  お風呂の順番や、共有部分の掃除についてなんかの話題もグループラインで流れてくる。  私は残った料理が台所に2人分ありますよ、とメッセージを残しておくことにした。    世の中がどんなことになっていても、生活というものは回っていくし、時間だって過ぎていく。  大学の講義がリモートワークで行われることになったけれど、それ以外為すべきことのない私の生活は淡々と流れていた。  それでいいと思っていた。  今はそうしておくことが大事なんだと納得もしていた。
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