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それは突然やってきた。
家に籠りはじめて2週間ほどたった時だった。いつものように料理を作って残った分は食堂に置いておく。
こうしておくとここに住んでいる他の誰かが食べる。
ここはいわゆるシェアハウスだ。
玄関を入ってすぐに大きな土間があるから住人は茶化して『メゾン・ド・マーニ』なんてひどいダジャレで呼んでいる。
本当は竹下壮というがだれもその名前で呼んでいない。
平常なら居間に常に誰かがいるこの家も、今は居間に集わないことがルールになっている。
今は同じ家の中にいるのに、みんなSNSでやり取りをする。その感じにもだいぶ慣れた。
お風呂の順番や、共有部分の掃除についてなんかの話題もグループラインで流れてくる。
私は残った料理が台所に2人分ありますよ、とメッセージを残しておくことにした。
世の中がどんなことになっていても、生活というものは回っていくし、時間だって過ぎていく。
大学の講義がリモートワークで行われることになったけれど、それ以外為すべきことのない私の生活は淡々と流れていた。
それでいいと思っていた。
今はそうしておくことが大事なんだと納得もしていた。
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