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傷つけてしまったのかもしれないと、不安になってきた頃。
遥香さんが口を開いた。
「いつから」
「ふえ?」
「出張よ!」
「あ、週明け……」
「すぐだね」
そして、遥香さんは一人で考え込むように俯いた。
「……分かった。引き受ける」
次に顔を上げた時、きっぱりとそう言って、俺の方が驚いてしまった。
「え」
「ここのことは、よく見てる。心配しないで。
できるだけそっちに連絡入れるわ」
「あ、ありがとう」
遥香さんは、さっぱりした笑顔をこちらに向けて、「じゃね」と台所を出ていった。
なんだか猛烈にほっとしていた。
立ち上がって空き缶を水で洗ってからつぶす。
そんな自分に苦笑した。
苦笑しながら切り替えようと思った。
ここからは、きちんと会社員としての役割を果たすのだ。
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