1.志摩 (20歳 学生)

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 いつものように布団をカバーに詰め込んで作った簡易ソファに、だらっとこしかけて、本を読んでいた時だった。  ふいにお城公園に行きたいと思った。  思った瞬間からその行きたさ加減が半端じゃなくなった。  暴力的で激しい感覚だった。私はこんな感覚を知らない。  その公園は、名前の由来のお城自体は残されていないが、広大な敷地に子供が遊ぶ遊具のエリアや、お堀の周りを走るジョギングコースなどがある。  私は大学に入学してから毎日のようにそこの庭園を訪れた。大学から駅までの途中にあるので、いつもそこを抜けて帰るのだ。  地元よりちょっと都会なこの街で、手軽に自然を感じられることが良かった。  地元にいた時は木も草も、うっとおしいだけだったのに、おかしなものだと思う。  とにかくそこに行きたくて、体が震え息が苦しくなった。    今頃何の花が咲いているのだろうか。お堀には鴨がいるだろうか。  もう桜は咲いただろうか。咲いた桜の下をゆっくり歩くのが最高の気分だけど、今年はできない。  気になりだしたら止まらない。  そこをどうしても歩きたくなって。その空気を吸えないのが辛い。急に高まった気持ちについて行けず、知らない間に涙があふれだした。  公園に行きたくて、行きたくて泣いている?  私は五歳の子供ではないのに。おかしい。これはおかしい。おかしすぎる。  私は自分に困惑した。
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