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「そうかあ」
「話を聞いてもらったら少し落ち着いた」
私がそう言うと、杉君は「うん。こういうときだから無理はいかんよ」と大真面目な顔で言う。
「もともと、無理が美徳である世界なんてよろしくない」
「だから杉君はダイエットしないの?」
「志摩さん、ひどくはなかろうか?」
杉君が大げさに怒ったふりをして、いつものお約束の感じになった。そのことにほっとする。
「こんど、杉君の好きなもの作るよ」
「食事作りもしばらく休めばいいさ。たまに食うカップ麺はうまい。こんど、俺の地元のやつをやろう。地域で味が違うらしいから」
「そうなの?」
ああいうものは全国同じ味だと思っていた。
「好みに地域性があるからだと聞いた」
「へええ!」
興味がわいて、たべてみたいと言ったら、
「そもそもみんな志摩さんのご飯に期待しすぎていたな。俺らの志摩飯争奪戦みたいなのもいけなかった」
悪いな、こうなってみんな暇でな。と杉君は笑った。
「でも、それで得意になってたくさん作ったのは私だよ。みんな食費だしてくれるから助かったし」
アルバイトに行けない今、親からの仕送りだけで生活していかないといけない。みんなが出してくれるお金がありがたかった。
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