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「大丈夫。お互い2メートルの距離を保ってる」
そう言ったのは、壮史くんだ。
色が白い彼は頭に巻いたタオルが壮絶に似合っていなかった。
壮史君はバイトで生計を立てている大学生だ。バイトの他にも何かしているようだけど、絶対に教えてくれないから、もう誰も聞かない。
「俺、植木屋でも働いたことがある」
「えー!! そんな細くて? 大丈夫なんかよ!」
司さんが笑う。こっちはまるでそういうアイコンみたいにTシャツとタオルが似合う。軍手も。
ウィンドサーフィンが趣味なんだそうだ。
「現場だけが仕事じゃないですからね」
「なんじゃ~い!」
ボソっという壮史君に司さんがずっこける。
「でも、どこに何植えるとか。植物の種類は分かる」
「おー、いいね!」
指示して指示! と笑って司さんが何かの苗とスコップを持ち上げる。
みるみるうちにド・マーニの狭い庭が花と緑で埋まっていく。
雑草や、なんだか分からないガラクタにあふれた、放置された暗い庭だったのに。
一番向こうで、みんなから距離をとるように杉君がガラクタをゴミ袋に押し込んでいた。
私は窓を閉めた。
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