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1.志摩 (20歳 学生)
「どんなに忙しくて、ボロボロのときでもやっぱりしたいって思うことが、本物の趣味ってもんだと思うのよ」
これは母の言葉である。
私を産んだとき、母は慣れない育児にくたびれ、眠れず、ボロボロになったそうだ。
目はかすれ、抱っこに疲れた体は背中も腕も痛かった。
子供の命を守らなければいけないという重圧で気持ち的にも追い込まれ、常にびくびくドキドキしていたのだという。
それでもどうしても母は映画を観たかったのだそうだ。
沢山コレクションしてあったディスクが棚で埃をかぶっていくことが耐えられず何度も泣いたという。
「あのシーンだけ」「あのセリフだけ」そんなふうに少しずつ観るようになり、ついに、産後初めて『サウンド・オブ・ミュージック』を全編通して見られたときには赤ん坊の私をはるかにしのぐ大号泣をしたそうだ。
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