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002
私の寒々しい屋敷に小さくて愛らしい天使がやってきた
―― 彼女を見つけた日の僥倖を私は生涯忘れないだろう
(今日も彼女を泣かせてしまった……。何がいけないのだろうか)
屋敷の若き主 サフィールは、なかなか心を開いてくれない愛しい人を思って悩ましげに息をついた
深い森の奥にひっそりと建てられたこの屋敷には家主であるサフィールと数名の使用人と一緒に住んでいる
かつて王家専属の魔術師であったサフィールは、反派閥に陥れられ被った冤罪で牢に入れられ一年ほど拘束されていた
その疑いが晴れた後、うんざりしていた城務めを辞めここに引きこもった
今の仕事は、王宮魔術師の名誉顧問のようなもので、送られてくる書類の添削や定期試験等の問題作成を行っている
ごくたまに王宮に仕える魔術師らの相談窓口もしているがそれも書面でのやり取りのため、ほとんど机と向かい合う生活を送っていた
完全な隠居生活で気楽だが、世と関わる事を殆どやめ感慨のない虚しい日々を過ごしていた
その日も彼は日課としていた屋敷の前の除雪作業をしていた
一日中机に張り付いて普段体を動かさない為、いい気晴らしになるのでほぼ毎日欠かさないようにしていた
執事のドルドには雪かきなど主がすることではないからやめてくれと言われているが、彼の心配性は今に始まったことではないので無視していた
屋敷の周りの道を確保できたのでそろそろ戻ろうかとした時、雪面にどさりと何か重いものが落ちた音がした
木々や屋根から雪が落ちたのかと思ったがそれにしては音が大きい
野生の鳥獣の可能性を考え恐る恐る音のしたらしき方に向かった
(·····人だ)
子どもか?
小さな人が倒れていた
突然動いて魔術や呪術を掛けて襲ってくるかもしれないと警戒しながら近づいていく
半径50cmほどまで近づいてみたが、その人はぴくりとも動かない
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