夫の怪しい行動

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夫の怪しい行動

夕刻、ユリアを家に送り届け、ソフィアが城に戻ると、セオドアはいなかった。陸軍の将軍サマセット伯の元を訪れているらしい。今日は戻らないと予め言い置いていったそうだ。 サマセット伯の領地はレイモンド王国に接している国境で、故に彼は辺境伯とも呼ばれている。 「サマセット伯爵の元へは確か、先月も…」 ソフィアが記憶を辿りながら尋ねると、何故か不在を告げた侍従長のハロルドは、一瞬だけ眉を上げた。 「サマセット伯の奥方は王太子殿下の母上の妹御でいらっしゃいますから。宮中の柵を外れれば、叔父甥の間柄。近しい気持ちが生まれる故ではないでしょうか」 いくらソフィアだってセオドアの血縁関係くらいは知っている。まるで用意されていたかのように、流暢な回答が逆に気になった。
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