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「それでサマセット伯のオリバー令嬢とは従妹に当たるのよね。私が来なければ、彼女が王太子妃候補だったとか」
ソフィアも何度か会ったことがある。勝ち気そうな青い瞳の豊満な胸をした女性だった。はちきれそうなドレスの胸元から覗く白い肌に、ソフィアは思わず目が釘付けになってしまった。身分の高い女性は肌を出し過ぎてはいけないと、レイモンド王国ではずっと言われてきたからだ。
けれど蔑みの表れだったソフィアの視線を、オリバーは別の意味に解釈したらしい。扇でさっと胸元を隠しながら、優越感たっぷりに言ってきた。
「王太子妃殿下はまだまだお子様みたいですわね」
ソフィアは滅多に人を嫌うことはないが、彼女だけは好きになれない。けれど、それはもしかしたら嫉妬なのかもしれなかった。オリバーと王太子殿下は昔付き合っていたとか、今もこっそり二人で会っているとか、そんな話はソフィアが聞きたくなくても、嫌でも耳に入ってくるのだ。
「もしかして今宵もオリバー嬢にお会いになっているのでは?」
「下々の者の取るに足らない噂です。王太子妃様。惑わされてはなりません」
老獪な笑みだった。黒も白と言いくるめてしまいそうな。
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