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ソフィアが16歳になるのを待って、結婚式は2つの国の国境で行われ、ソフィアはこの日より、祖国レイモンド王国を離れ、アルノルド王国で過ごすことになった。
街中にあり、広々とした庭園を有するレイモンド王国の居城と比べ、アルノルドの城は、山を切り崩して建てられた完全なる防衛のための城だ。
それだけアルノルドの国は外敵が多く、攻められることが多い脆弱な基盤の上にあるということなのだろう。
内戦も多く、貴族内でも派閥があり、国王が絶大の権限を握り、君臨している国家というわけではないらしい。むろん、まだ16歳のソフィアもそういったアルノルドの国情は薄々は感づいていた。
自分がレイモンドとアルノルドの懸け橋に過ぎないことも。
「本日よりこちらの国に参りましたソフィアと申します。右も左もわからないことだらけですが、殿下にはよろしくお導きくださりますよう…」
初夜に当たる夜、二人きりになった寝室で、ソフィアはそう言って、深く頭を垂れた。
「あ、ああ」
セオドアとは婚礼の時にも会っているが、あの時は儀式だったので、親しく言葉を交わすのはこの時が初めてだった。
顔も、初めてお互いまじまじと見つめ合った。
セオドアは25歳。アルノルド国王の第1子で、今は王太子の地位にある。つまり、ゆくゆくは国王となり、この国を統べていくべき男だ。
「小国の山城に住んでいる王子なんて、野蛮な熊みたいな男だったらどうするの? ソフィア、こんなお話、断っちゃいなさいよ」
ソフィアのすぐ上の姉のフローラはそんなことを言って、ソフィアを不安に陥れたが、今、こうして目の前に現れた姿を見ると、全然姉の想像とは違う。ソフィアはこっそり胸を撫で下ろしていた。
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