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夫はとても心配性です
れっきとした王太子の妃であるのに、処女。
何とも言えない複雑な立場のまま、ソフィアはこの国に来て、二度目の春を迎えようとしていた。
応接室に友人が来たとの知らせを受け、ソフィアは足取りも軽くそこに向かう。そして、友人の挨拶もそこそこに、切り出した。
「ユリア様。今日はお天気がいいから、サンドイッチを持って、湖に行ってみない?」
ユリアはこちらに来て出来たソフィアの親しい友人だ。
伯爵令嬢で、祖先を辿っていくと、セオドアともつながりがあるらしい。結婚披露のパーティでセオドアに紹介され、その後城のお茶会に招き、そのお礼にユリアの家での舞踏会に招待された。年も近く、3回目に会った時には、すっかり意気投合していた。
ソフィアが滅多に外出できない身分であるから、ご機嫌伺いと称して、ユリアの方から度々城に遊びに来てくれる。
「湖って…私は構わないけれど」
ソフィアの提案に、ユリアは少し顔を引きつらせながら答える。彼女の言葉の『私は』に、ソフィアは慮ることもなく、宮廷のコック長にサンドイッチとフルーツの盛り合わせを作らせる。
ピクニック用のバスケットが全部埋まる前に、ある人物が勢いよくソフィアの前に現れた。
「ソフィー! 湖に行くって本当なのか?」
公務はいいのだろうか。ソフィアは夫の立場の方が気になってしまうが、セオドアは構わず続ける。
「誰と誰を伴って行くんだ」
「ユリア様と…あとは御者のハンスくらいでしょうか。何か問題でも? 殿下」
「問題だらけですよ。湖なんてなぜそんな危ういところに…。途中で何者かに襲われたらどうするんですか、岸辺を歩いていて、湖に落ちでもしたら…」
「……」
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