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また始まった、とユリアは両手を挙げて呆れかえったポーズを取り、ソフィアはぽかんとしたまま何も言えなくなってしまう。先程のユリアの「私は」という回答は、その後に「けれどあなたのご主人が許さないんじゃなくて?」という一文を潜ませていたものらしい。
そう、ソフィアの夫のセオドアは、過剰にソフィアを心配するのだ。
こういった外出がセオドアのこの言いがかりにも近い杞憂のせいで、何度ぽしゃったか知れない。
「…だ、大丈夫ですわ、殿下」
「君はいつもそう言う」
だって、もう子どもではないんだし。セオドアみたいに、最悪の想像ばかりをいつもいつもしていたのでは、ソフィアは何も出来ない。
「お言葉ですが、城内なら何も起こらない、というわけではないと思います。殿下のそれは、杞憂と言うんですよ。空が落ちてくるのを憂うようなものではないですか?」
今日はどうしてもユリアと湖に出かけたいのもあって、ソフィアは笑顔ながらも、はっきりキッパリ、セオドアに言った。
「君の言うことは尤もなんだけど…」
ゴニョゴニョと呟いてから、セオドアは「わかった」と頷いた。
「なら馬車の後ろには、宮廷の警護隊をつけさせよう。万が一湖に落ちたときのために、特に泳ぎの達者な者を選び、10名程…」
それから医者も同行させた方がいいだろうか…と真剣に悩んでいるセオドアに、(わかってないよ…)と、ソフィアとユリアはこっそりため息をつくのだった。
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