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ユリアがゆっくりとソフィアの肩に手を伸ばす。抱きしめられて、ソフィアは一粒だけ涙をこぼした。
まだ17歳のソフィアの体つきは、やはり幼い。開きかけの花を無理やり咲かせてしまうよりも、大輪の花が咲く日を王太子殿下は待ってらっしゃるのではないかしら…と、ふとユリアは思ったが、これだけ思い悩んでいるソフィアに、気休めと受け取られそうなことは言えなかった。
だから彼女は別のことを聞いてみた。
「ソフィア様は王太子殿下を愛してらっしゃるのね」
まるで姉か母のように、ユリアはソフィアの栗色の髪を撫で続ける。ソフィアは自然にレイモンド王国にいたころのことを思い出していた。
何不自由なく育てられ、蝶よ花よと愛されていた日々。それらを捨てて、身一つで誰も味方のいないアルノルドに輿入れしてきたのだ。
そんなソフィアにセオドアは凄く優しかった。いつも、足りないものはないか、不自由していないかと気を配ってくれる。寂しい、とか帰りたい、と思わなかったのは偏にセオドアがいてくれたからだ。
いつしか自然にソフィアの心は彼に寄り添い、身体は彼を求めるようになっていた。
だからこそ、つらい。まるで宝玉のごとくに飾り立てて、ケースに入れて、触れようともしてくれないこの状況が。
「…はい、愛しています…」
ソフィアの声は小さくてか細くて、ユリアの耳にだけ届いた。
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