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カタカタとキーボードをタイピングする。
紙を捲る。筆記が作業音を生み出す。
メールを送る。資料を探す。
積まれていた書類がだんだん減っていく。
制服を着た生徒が仕事をする。
自由を謳う学園において大きな役割を持つ生徒会は日々活動する。
そんな日常を眺めていたのがおれ、雨森 千歳。
先程までひたすらグラフと格闘していた生徒会の会計である。数字の羅列が踊る脳を休めているだけなので、決してサボりじゃない。
今は5月も半ばを過ぎて、鬼門である部費の申請審査、振り分けが大方片付いた頃。
気持ち的には解放感に浸りたいが、これから新入生歓迎会の準備が待ち受けている。
晩春は忙しない。肩が凝りそうだ。
ふわりと出てきた欠伸を噛み殺していると頭上から休憩を告げる声が聞こえてきた。さらさらした黒髪が視界を掠める。
「そろそろ休憩にしましょうか。千歳は紅茶で良いですよね?」
「うん、ストレートでお願い」
「分かりました。お二人は?」
他の面々も顔をあげ、もうそんな時間かと時計を確認しつつも要望を伝えている。
「俺はコーヒーを頼む」
「オレ、も」
いつもと変わらない注文を聞きながら、背もたれに凭り掛かって背筋を伸ばす。
デスク上を雑多に散らかる筆記用具や書類、それらを整理した。サッと終わらせて席を離れると、給湯室に向かう。
仕切りのない、機能性重視の給湯室はほろ苦い香りを漂わせていた。
「伊織ちゃん、今日は何がいいかなぁ」
湯気の立つケトルとカップ、ドリップポット達の横に並び立つ。手際良く準備を進める副会長の十三 伊織は一瞬思い出すように宙を見た。
「冷菓にしましょうか。お好きなのを選んでおいてください」
そう言えば、最近暑くなってきた。
あまり季節の移ろいに鋭くないが、陽が昇っている時間が伸びてきた気がする。冷蔵庫を開け、探すと手ごろなサイズのものが4つあったので取り出した。
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