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何事もなかったかの如くアームチェアに腰掛け、優雅にコーヒーを味わう姿は確かに様になっている。
成績優秀、文武両道。家柄もよく稀有なカリスマ性を持った彼は正しく勝ち組。
ただ性格は先程ので分かる通りの俺様で、座右の銘に天上天下唯我独尊が似合う男。顔に釣られて交際すれば泣きをみるタイプだ。
だがしかし、人気は高い。
学園には親衛隊──ファンクラブを上位互換したような組織──が存在するのだが中でもかいちょの規模は最大級。
一説によれば目が合うと惚れる(笑)らしい。だったらおれはかいちょに毎日秋波を送っているし、なんなら狂愛の域に達している。
考えただけで鳥肌が立ったので真相は解明されていないけれど。
「─……おい、伊織が先に行ってるってよ」
「うわ、俺様野郎」
精悍なお顔が間近にあったせいでうっかり本音が漏れてしまった。さっきといい、かいちょとまともな会話の切り口が掴めていない。
「相変わらずかわいくねぇな」
「ああ、生きる理不尽の権化ことタチランキング1位のかいちょだったね」
「何だ、抱かれたかったのか。明後日の夜なら空いているぞ?」
「妙にリアルだね~」
今日は埋まってるのかね。
切り口だけじゃなく会話も噛み合っていないのに、かいちょは艶な笑みを向ける。学園のネコと呼ばれる子達ならきっと崩れて落ちているだろうね。
「で、どうする?」
黙っていると腰を引き寄せられた。
肩を抱くまでの流れがスムーズで、相当遊んでいるなぁと他人事のように思う。空いた右手が耳に触れようとしたところでハタキ落としたけれど。
「お巫山戯はこれくらいにしようね、会長」
やっぱしかわいくねぇと漏らすかいちょは持ち場に追いやった。そっちこそ気軽に色気を振りまくな。
────その後、伊織ちゃんの手伝いをしていたら遅れた詫びを求められた。
「その真意は?」
「夕食を一緒に食べたい、先輩の口実です……ではダメですか」
「満点です」
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