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「ただいまー」
学園の至るところで使用する黒いカードキーで解錠し、帰宅する。
基本は2人で相部屋だが、役員や委員会の幹部なんかは1人部屋だ。これは生徒会に入ると与えられる特典の1つで、他にも授業の公欠権や食堂で中二階席を使用出来るといったものがある。
ただガッツリ働く為の措置といった意味合いがあるので手放しに喜べない。ワーカホリック仕様だと思っている。
部屋着に着替えて、リビングを突っ切った。綺麗に整頓されたキッチンで、今日のメニューを考える。
「ん~、どうしようかな」
冷蔵庫の中身と時間を加味すると簡単なものがいいな。今からよろず屋と呼ばれる売店に行く気力もないので、ワンプレートで済むもの……。とりあえず使えそうな食材を取り出した。
「卵にバター、ソーセージ。玉葱と……オムライスにしよ」
決定すればさくさく動く。具材を火に掛けている途中でケチャップがないというアクシデントに見舞われたが、バターライスにすることで誤魔化した。マヨネーズはあったので卵に混ぜてオムレツを作っていると
──ピンポーン
「え、ちょっと待ってー!」
今は手が離せないよ。オートロック式で、防音バッチリなので聞こえるわけがないのに叫んでしまう。自分の分だから。そう言い訳して秒速で終わらせ、伊織ちゃんを招き入れた。
「お邪魔します」
「はーい。あとちょっとだから待ってて」
くし切りにしたトマトとちぎったレタスを載せて完成。卵効果で見映えもぼちぼち。
伊織ちゃんが運んでくれている間に作り置きのアイスティーを用意した。
「本当に千歳は器用ですね」
「器用貧乏、が正しいかなぁ」
伊織ちゃんの料理は食べてみたい。
最後に瓶詰めのパセリを振って、赤いトマトから食べる。甘酸っぱい味がいっぱいに広がった。
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