望遠鏡

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 お父さんに、買ってもらった望遠鏡。  今日は家族で、月を見に来たんだ。  夜の山は暗くて静かで、ぼくたちの話し声を、動物たちがこっそりと聞いてる気がする。  お父さんが、望遠鏡をよいしょと持ち上げる。 「ちょっとだけ待っててね。すぐに見られるようにするから」 「わかった」  ぼくは、いっしょに持ってきた双眼鏡で、夜の山に隠れてる動物を探し始めた。でも、暗くてちっとも見つからない。  ぼくの後ろで鼻歌をうたってるお父さんを双眼鏡でのぞくと、お父さんはいつもより大きく見えた。反対にしてお母さんを見ると、お母さんはにんじゃみたいに、あっという間に遠くに行くんだ。 「夜の山は冷えるから、スープを飲んで」  さっきまで遠くにいたお母さんが、となりでスープの入ったカップを差し出した。 「よおくかきまぜてね」  わたされたスプーンに映るぼくは、さかさまだ。  大きなお父さん、遠いお母さん、さかさまのぼく。だれも変わっていないのに、どうしてこんなに違って見えるんだろう。 「準備できたぞー。おいで」  お父さんに呼ばれて、ぼくは望遠鏡を覗く。 「すっごーい!」  遠くのお月様が、手を伸ばしたら届きそうなくらい、大きく大きく見えたんだ。  ぼくは思った。望遠鏡から見るぼくを、お月様が見たのなら、ぼくはどんな風に見えるんだろう。  アリみたいに小さいのかな。それとも、ぼくだけ遠いのかなって。
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