5月10日

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5月10日

今日は久しぶりの彼女とのデートだ。 デートといっても、来週から始まる同棲の部屋の採寸や、家電製品を買いに行くだけである。 彼女と会うのは三週間ぶりだ。このご時世、なかなか会うこともできなかったので、ひなたはご機嫌である。 「いってきまーす」 外へ出て車に乗り込む。雲行きが怪しく、少しどんよりとした空気だが、ひなたには関係ない。アクセルを踏み込み、彼女との待ち合わせ場所へ向かった。 「おはよー、ごめんな遅くなって」 ひなたが着いてから五分後、彼女が小走りでやってきた。今日は珍しくダメージジーンズをはいている。 「おはおはー。ぜんぜんー」 軽く挨拶を交わし、住む予定のアパートへ向かう。そして雑談をしながら二十分、アパートについた。 不動産の担当者と挨拶をし部屋の中へ入る。まだクリーニング中で、壁紙が剥がれていたり、畳がめくられていた。 メジャーで部屋の長さや、冷蔵庫置き場の長さなどを測ること一時間、部屋の間取り図に書き込みながら採寸は終了。不動産にお礼を告げ、アパートを出た。 「コンロ右が強火やったなあ」 ひなたは少し肩を落としながら彼女に言った。 「ほんまになあ。残念や」 彼女も少し元気がない。 一週間前、ひなたがなんとなく入ったホームセンターに、ガスコンロが激安で売られていたのだ。両面焼きや、コンロタイマー等、十分な機能を付けて、価格は二万五千円。そこから一割引してくれるとの事だった。 ひなたはすぐ彼女に連絡を入れ、コンロの向きが合えば買おうと言っていた。 しかし、残念ながら強火の左右が向きが反対だったため、そのコンロは諦めないといけない。二人は他の家電屋へ向かった。 その後も二人は、冷蔵庫や掃除機を色んな家電屋を巡り、購入が出来た。 そしてあっという間に時間は過ぎ、もう日も落ちていた。二人は明日仕事なので帰らなければいけない。 「楽しかったわあ。一緒に住むの楽しみや」 彼女の家に近づいた時、彼女が車の窓の外を見ながら言った。 「ほんまにな。たのしみや」 ひなたも繰り返す。そして彼女を家に送り、ひなたは車を走らせながら考え事をする。 人生で初めての同棲である。ひなたは今、二十二歳だ。二十五歳くらいでそんな事をするのだろうと思っていた。 しかしひなたの彼女は二十七歳。もう結婚も視野に入れないといけない年齢である。 もう少し遊んでいたかったのも本音ではあるが、好きになったものはしょうがない。 ひなたも好きに遊べない事を覚悟して彼女と交際を始めた。 最初は遊びに誘われた時、めんどうだ。と思っていた。彼女は、中途半端な気持ちで付き合える年齢ではなかったからだ。しかし、一度遊んでみると、そんな気持ちはすぐに吹き飛び、付き合うまで時間もかからなかった。そして喧嘩もしながら二年。何とか、まだ好き同士でいられている。 「一生好きでいる」など、甘い言葉を一度も言ったことは無い。感情を約束するなんて、無責任だ。なんてひねくれた事を言って、一度大喧嘩になった事があるが、間違ってはいないと思う。 少し重たいなと、彼女に対して感じることはあるが、真面目で真っ直ぐな彼女は尊敬しているし、これからもどんな形であれ、仲良くして行ければな。と思いながらひなたは帰路に着いた。
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