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5月13日
ひなたは今、祖父の家にいる。
昨日、母から「あんた暇なんやったらおじいちゃんの家行って衣替え手伝っといで」と言われたからである。
バイパスを走り、1時間少し。ひなたは祖父の家に到着。ひなたは祖父が大好きである。
「久しぶりー!元気にしてたかー!」
ひなたは元気な声で挨拶をして、家の中に入る。
「おぉ、ひなた。今来たところか?」
祖父は、絨毯をたたんでいるところだった。ひなたは手洗いうがいを済ませ、祖父のお手伝いを始める。
「ひなたが来て助かったわ」
祖父はもう九十一歳。少し動いただけでも、少し息が上がっている。しかしその歳で、自分でベッドを作ったりするような人である。
「いいえぇ」
ひなたも祖父に褒められ、弾んだ気持ちになる。そこから、冬用の毛布を二階へ運んだりしているともう四時になっていた。
「買いもんいってくる!」
ひなたは歩いて近くのスーパーへ行き、晩御飯の食材を買い出しに行く。この街は老人が多く、ひなたがスーパーへ行くとすこし浮いたような感じになる。
ひなたは方向音痴なのでスーパーの中をグルグルと回る。晩御飯の食材をカゴに入れ、レジへ並び、買い物は終了。家にまた帰った。
料理も祖父の家に行く一つの楽しみである。ひなたは家に帰り、早速準備を始めた。
今日はハンバーグときんぴらごぼうとお味噌汁だ。
まずは、玉ねぎをみじん切りにしてレンジに入れ、その間に合い挽き肉をボウルで塩と混ぜこみ、材料を入れていく。
「どぅえあっ!」
牛乳が思った以上に入ってしまった。ひなたは失敗すると、必ず変な声を出してしまう。そしてタネはベチャベチャ。
合い挽き肉は全て入れてしまった。
「あーあー」
少しがっくりしながらもひなたはパン粉を多めに入れた。これで水分も少しは吸ってくれるだろう。
「全然あかんがな」
作戦は失敗。最終手段の食パンをちぎり、ボウルの中へ入れてみた。
さっきよりましになった気がするので、ひなたは成形をして焼き始める。
そしてその間にきんぴらごぼうも調理を始め、ほぼ同時に出来上がり。
「よしゃああああ」
ひなたは同時に料理が終えられると、なんか料理人になった気分になるので、テンションがあがる。少し味見をする。おいしい。
「おじいちゃんできた!」
ひなたは、祖父を呼び、テーブルに料理を並べる。そして味噌汁もすぐにできあがったので、料理は終了。
「ん、おいしいわ」
祖父から、味を褒められひなたはガッツポーズ。誰かに作った料理を褒められるのが一番嬉しい。
「良かった良かった。いっぱいたべてや!」
テレビを見ながら食べていると、突然祖父がひなたの顔を見て口を開いた。
「お前、料理人でもなったらええのに」
「なんよいきなり」
あまりの突然な発言にひなたはお茶をむせる。
料理人になる事も、高三の時少しだけ悩んだ。しかし、料理はいつでも出来るし学べるから。という理由で断念。たまにYouTubeなどで料理の勉強をしているくらいだ。
「おまえ、料理好きやろに。せっかく美味しいのにもったいない」
そんなもったいぶられる程の腕は無い。今日も牛乳をドバっと入れてしまったくらいだ。仕事でないから許されることだ。
「やー、僕はもう好きな人だけに作って美味しい言うてもらえたらええねん」
適当に良いように言ってごまかす。祖父は耳が悪いのできっと聞こえていない。
ひなたは残りのご飯を食べ終え、YouTubeでまた料理の勉強を始めた。
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