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5月2日
朝六時。着信音でひなたは起こされた。
また雀の鳴き声に起こされなかった事に今日は少し憤りを感じる。
「今日うすい仕事休みで」
電話の相手は会社の上司だ。どうやらやる事が無くなったので今日も休みでとの連絡だった。
もう二週間ほど出勤していない。
今日は何をしよう。
テントの中で、読みかけの本を読みながら一日の計画を立てる。
一度家に入ると母がもう起きて、パンを食べていた。
「おはよ。今日また休みなった」
「ほんならBBQしよか」
母は、休みになった事に、特に驚くことも無く、淡々と提案してきた。
「お、ありあり」
寝起きなので、テンションも低くひなたも淡々と返事をする。温度の低い家庭である。
午前中、昔のゲームなどがまだ動くのかをチェックしたりしながら半日を過ごした。
そして3時頃、家の庭で父と火を起こし、BBQが開始。お昼は何も食べなかったのでお腹は空いている。野菜や肉を上手い具合に焼きながら、朝とは打って変わって話が弾んだ。
「お前もお酒飲んだらええのに」
父がひなたに口を尖らせながら言った。
ひなたはお酒を飲まない。飲めない訳では無い。
19歳の時、友達と初めて飲んだ時も、三杯くらい楽しんだが、特に酔っ払う事もなかった。大人になった気分がとても楽しくてお酒は好きな飲み物になった。
しかし二十歳を超えてからは飲んでいない。 ドキドキ感が無くなってしまったからだ。逆に、大人になってしまった感じがしてお酒は嫌いな飲み物に変わった。飲まないと楽しくない人生なんて送りたくない。そんなよくわからない気持ちがひたなをお酒から遠ざけた。
「味がなかなかな、好きちゃうねん」
家族にそんな事を言うのは恥ずかしいので適当に誤魔化す。
そして2時間ほど楽しんだ後、火の処理にはいる。
人の命を炎とは、上手いこと言ったもんだ。
ずっと燃やし続けるには燃料が必要。そして勢いの良い炎は他の所にも燃え移る。
炎が消えそうになったら、煽ってやるとまたじわじわと燃え始める。その時に余計なものを入れると炎は消えてしまうし、いいものをいれると、また勢いよく燃える。
ひなたはそんなことを思いながら火の処理を済ませ、今日の日記をつけ始めるのであった。
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