《過去》

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《過去》

警察と思われる人物が去ってから 「猫」の威嚇する泣き声は無くなり以前同様、刹那く、悲しい…泣き声に変化していた。 俺は起き上がる事で激しい頭痛が襲って来るのではないかと枕に顔を押しつけ考え込んでいた。 するとこれまで俺が生きて来た経緯が脳裏に蘇り… 特に関心は無いのだが気持に反して頭の中に映像が写し出された。 俺は幼少時代、両親からの愛情無く育った事は確かで… 両親は仮面夫婦であった。 父親はT大学を卒業し公務員総合職試験に合格… 官僚として外務省に勤務している。 母親はK大学を卒業し公務員総合職試験に合格… 大臣の秘書を行なっていた。 父親はエリート意識が強く野心旺盛で母親が秘書として勤める大臣の情報を得るため… 秘書である母親と結婚したのであった。 父親は母親に愛情のかけらも無く俺を産んだ事は確かであった。 俺には弟がいる… しかし弟は父親の子どもではなく… 母親が浮気をして出来た事である。 弟は両親の血液から出るはずの無い型であった事で証明出来たが… 父親は特に激怒する事無く受け入れ弟を育てていた。 父親は血の繋がない弟に溺愛していた。 それはどうしてか分からないが俺はその当時から無味乾燥であり親父から見放されていた。 弟はある意味生き残りを常に考え両親の機嫌を伺いながら生きていた… それが父親は気に入り、違った意味で溺愛したのでは無いかと? 俺は感じていた。 俺は両親の子どもではあるが家政婦に育てられ両親の愛情を受けずに育った。 それが原因なのかわからないが人と接する事が苦手でありコミュニケーション能力が劣っていた。 そんな事から学生時代は苦痛そのものであった。 勉強は特に興味がある訳ではなく… 覚えれば良いので、それなりに問題無く出来ていた。 学生時代での楽しみはひとり空想の世界に没頭する事であり… 空想は食べる事、寝る事だけで生きる事が人生設計であった。 食べる事はいろいろな食材を喰い尽くす事… 良い言い方をすればグルメであったが… 働いてグルメ化になるとか俺にはそんな野心が無く… この頃から「春に目覚め」オナニーによる射精を覚え俺の生き方… 楽しみに加わったのであった。 そんな俺は人と接する事、コミュニケーション能力が低いため… 勉強は出来たが「イジメ」に遭遇していた… 俺は友達から無視される事には特に苦痛では無かったが… 父親が官僚であり立派である事からの僻み的な「イジメ」が多発していた。 その一つは暴行で… 学校帰りの帰宅時に目隠しをされ身体への打撃てきなリンチ… そして、ある日は覆面を被った複数の同級生に抑え付けられ「カマキリ」「バッタ」などを食わされた陰惨な「イジメ」を受けていた。 しかし俺は両親に訴える事無く耐え忍んだ… 唯一、俺が自分を褒めてやる事であった。 大学は母親と同じK大学を卒業した。 試験は出来たでのであろうか? 願書に父親がT大学、母親がK大学である事から合格したのでは無いかと感じていた。 そして就職は大企業であるN社を受け… K大学卒業である事から企業の門戸が広く両親の学歴もあり面接で何も喋らなくても合格となった。 そして俺はメガネ部門の品質保証に配属され精神疾患となった? ここまでで頭の中映像が終わりを迎えた。 すると携帯が鳴り俺は… 『なんだこの電話番号は?』 『出て見るか…』 「はい、タダです」 「こちら巣鴨警察ですが…」 「昨日お伺いしましたがいらっしゃらなかったので….」 え、何故、俺の携帯の番号を知っているのか? 俺は不審に感じていた。 すると… 「携帯電話の番号はアパートの大家さんから聞きました…」 『俺はなんてこった…これじゃプライバシーも何にも無いじゃないか?』 大家のいい加減さに少し呆れていたが… 「それで昨日伺ってのは以前「タダ」さんの下に住んでいました方が工事現場で亡くなったのです」 「それでその方をご存知かお聞きしたく…」 「署に出向いて頂けませんか?」 「分かりました…」 「あのその工事現場は…?」 「…「タダ」さんのアパートの近くの商店街入り口にあるビルですが…」 『え、本当なのか?』 俺は心の中で呟いた。 そして起き上がったが頭痛は無くなっていた。 すると、また「猫」の威嚇する泣き声が聞こえてきた。
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