《事情聴取》

1/1
前へ
/112ページ
次へ

《事情聴取》

俺は簡単に警察への出頭を了解してしまったが… アパートの元下の住人が事故死? 殺害? 俺に警察は何を聞きたいのか? 『面倒くさいなあ…』 『警察に行くって言わなきゃあ良かった…なぁ』 俺は独り言を呟きながらパジャマを脱ぎ捨て着替える事にした。 するとまた「猫」の泣き声が聞こえてきた。 これは俺の思い過ごしなのであろうか? 聞こえて来る「猫」の「泣き声」は「鳴き声」では無く「泣き声」に聞こえ… 泣き声は「猫」の鳴き声ではあるが… 俺はいつの間に… 心の何処かで別の生き物では無いかと感じていた。 俺が着替えていると「猫」が何を威嚇するような激しい泣き声となっていた。 その時、右脚に異変を感じた… 『え、どうしたんだ?』 一昨日「ノミ」に刺された場所が疼きはじめた。 疼きは右脚内部… 皮膚から2センチほど下部から上下左右に移動している様な? 大きな痛みは無いが… 今まで感じたことが無いおかしな感覚であり… 確かにそこ… 「ノミ」に刺された箇所… 皮膚下の体内に何か存在していた。 その疼きが気になったが巣鴨警察に向かうことにした。 巣鴨警察は商店街を抜け市役所と隣接していて5階建のビルで… 俺のアパートから徒歩15分の場所にあった。 歩いていると右脚の疼きが激しくなり多少痛みを感じはじめた。 その時、俺の脳裏に情景が映し出された… それは、ビル工事をしている職人が… 外壁を塗装するため窓に塗装が付かないように… 窓にシールドとしてビニールを貼り付けていた… すると突然… 足場であった鉄柵が外れその職人が転落した… 『はっ…!』 俺は我に帰るとその情景は脳裏から消え右脚の疼きが激しさを増しいた。 そしてふと立ち止まると… そこは一昨日に来た工事中のビルであった。 『約束の時間まで僅かだ…』 『少し急ぐか…』 俺は少し不思議であったが疼き脚を引きずりながら歩きはじめ… 巣鴨警察に到着した。 警察署は入口に… 「自分の命を大切に…そして皆んなのために」と書かれている横断幕が掲げられていた。 俺はこの横断幕に書かれた意味がどう言うなのか不思議だった。 『この街は自殺者が多いのかなぁ?』 独り言を呟きながら警察署内に入っていった。 そして受付にて… 「すいません、刑事課のウツミ刑事に呼ばれ…」 「参りました」 「お繋ぎください…」 すると受付の女性が内線にて呼び出し 1階建物奥からウツミ刑事が現れた。 「お忙しいところがお呼び立てして申し訳ありません…」 ウツミ刑事は俺に丁寧に挨拶をした。 「ここでは何ですから奥へ」 「はい…」 俺は奥の休憩室まがりの小部屋に案内された。 「今日、ダダさんにお越し頂いたのは…」 「確認と所在なのです…」 「以前、ダダさんがお住みになるアパートの下に今回亡くなった方なのか?」 「そうで有れば…その方の身内をご存知かを…」 そしてウツミ刑事は… 「亡くなった方のお名前はシモダカズキ…」 「職業は日雇いトビ職…」 そして俺が… 「そうですね確かシモダさんと言ってました…」 「職業は衣服からしか…分かりませんが…」 「シモダさんと私は特に付き合いは無く….」 「このアパートの大家さんからの連絡である回覧とか…」 「まれにゴミ出して顔を合わせる程度ですが…」 「そうですか…」 「あ、申し訳ないのですが面通しして貰えますか?」 俺は面通しの意味がわからず… 「あの…面通しって?」 「シモダカズキさんの写真を見て確認して欲しいのですが…」 「その写真が転落後の…」 「写真なのですが…」 俺は一瞬躊躇したが… 「分かりました…」 「あと、下田さんが転落した件…」 「事故なのか?」 「事件なのか?」 「判断が付きません…」 「そこで知っていれば教えて貰いたく…」 「他に下田さんが亡くなった現場の写真も確認してもらえますか?」 ウツミ刑事は丁寧に俺に確認して欲しいのだと感じ取れたが… なぜそんな写真を俺が確認するのかと? 「ダダさんまず写真はシモダさんである事に間違えありませんか?」 その写真はシモダであった。 顔は青白く口は半開きで目は薄ら白目であり写真を見ただけで死人であると確認出来た。 「シモダさんです…」 「転落現場写真を見てもらう前に…」 「ダダさん、シモダさんは親族をご存じですか?」 「さっきお話しした通りで…」 「まったく関わりが無いもので…」 「そうでしたね…」 俺の右脚は疼きが激しくなり痛みが増し… 額から油汗が流れていた。 「ダダさんどうしましたか?」 「ひどい汗です…」 俺は返事をするのも苦痛であり… 「ウツミ刑事、もうよろしいでしょうか…?」 「ダダさんすいません、最後に…」 「これは、シモダさんが転落した鉄柵なのですが…」 「安全ベルトのフックが外れていて…」 「なぜか誰か意図的に外したような…」 「そしてその安全ベルトのフックに夥しい獣の抜け毛が付いていたのです…」 俺はその話しを聞き… 他人事でないとは思えた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加