《六文銭》

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《六文銭》

俺は右脚の疼きが治まらず事情聴取途中で警察署から帰ることになった。 「ダダさんお大事にして下さい」 「ありがとうございます…」 右脚の痛みにより… 油汗は額から流れ…引くことはなかった… 俺は痛みから鼻呼吸が出来ず口から酸素を吐き出していた。 『ハッー…ハッー』 『参ったなぁ…』 『病院にでもいくかなぁ?』 俺は脚を引きずりながら巣鴨警察署入口から外に出た… 5分ぐらい歩いたであろうか? 『あれ?』 『痛みが無い…』 俺はいつの間に、口呼吸をやめている自分に気が付き… 独り言を呟いた。 そしてアパートへ帰宅を考えていたが… 『あぁ…夕飯を買わないと…』 『今日は揚げ物とビールにするかなぁ?』 ここの商店街は左右に店があり俺は肉屋の惣菜である揚げ物… コロッケ、メンチ、ハムカツを2個づつ購入した。 『チョット買いすぎたかなぁ?』 『まあ、明日食べれば良いか?』 誰に話すことも無く独り言を呟きレジ袋を右手に持ち帰宅する事に… するとシモダさんが転落したビルの横を通り過ぎようとした… その時… 大きな物体が俺の左手をかすめ降って来た。 もの凄い音が地面に響いた… その大きな物体は金属でも無く… 木片でも無く… その音は肉が叩きつけられる音であった。 「ドーン…べっちゃ…」 すると肉片が飛び散り地面は鮮血に染まっていた。 俺は、はじめ何が降って来たのか理解できなかったが… その大きな物体…肉… 人間であった。 上空何メートルから降って来たのだろか? その人間の身体はうつ伏せであったが… 地面に打ち付けられた衝撃が大きく首が湾曲に曲がり… 顔は天を見上げていた。 俺はその光景を目の当たりにした。 すると胃の食物が逆流し吐気を模様し… 嘔吐していた。 それでも俺は好奇心からその人間の側に寄ってみた… するとそれは巣鴨警察署で見せられた写真… そう、シモダさんであった。 その人間…シモダさんは目を細め俺を睨みつけた。 俺は恐怖に身体が萎縮していた。 そして目を瞑ったシモダさんのまぶたに六文銭が描かれ中心の四角いところに「ノミ」が蠢いていた。 俺は息を呑み首を振ると… その人間…シモダさんは消えていた。 俺は幻覚を見たのであろうか? その時、俺が見た幻覚… シモダさんは小ぶりの三毛猫であり俺の顔を見ると即座に逃げ出したのであった。
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