《生き方》

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《生き方》

俺はこの世界の矛盾を利用して生きていく… そんな考え方になったのはいつからだろうか? 俺は入社してメガネの品質保証の仕事をしていた。 はっきり言って激務であった。 来る日も来る日もお客からのクレーム対応を行っていた。 俺はお客に対して謝ることしか出来ない… その頃から仕事ってなんだ… 人生ってなんだ… そう思う様になり… 俺の脳は常にフル回転していた。 すると俺は不眠になり… 幻覚を見るようになった。 その幻覚は『誰もいないのに誰かに見られている…』 『静寂なのにザワツキが常に頭の中に渦巻いていた』 はじめからこの仕事に意欲がある訳でもなく… 何故、俺が… こんな訳の分からない幻覚に襲われるのかと? 俺は多分病人… ある意味、健常者とは違う烙印を背中に押されたのであろうか? 俺の根底に潜むモノは全てが淀んでいる世界であり… 正義や美しさ、労わり、癒し… そんなモノが存在しない世界である事を… 俺は徐々に実感していった。 そんな時、ニュースで… 呆け老人の自動車による暴走で… 家族を失った遺族が… 俺は人への感傷に興味も哀れみも感じないのであるが… ここでこんな矛盾した世界が存在するのだと… その暴走した呆け老人は平然と生きている… 何故だ? 『そうだよなぁ』 『この世の中…矛盾しか無いじゃないか!』 そんな事を想うと… 俺は吹っ切れた! こんなメガネを俺が作った訳でも無く… 勝手に会社が作り出しその品質を保証しろだと… 『ふざけふな!』 俺はひとり、大声で叫んだ! 吹っ切れた俺はもう怖いものがなく… 仕事を放棄し欠勤生活を行う事にした。 無断欠勤である。 俺が職場に来ないことから上司がアパートに訪れ事情を聞き始めた。 俺は「不眠、幻覚」が自分を苦しめている事を話すと… 上司は産業主治医に話し俺は診察される事になり… やはり… 精神疾患である事が明らかとなった。 俺は精神疾患であることから職種が配送業務に代わったが… 配送業務は僅かな期間であった。 それは品質を疎かにした事から信頼を失いメガネの売り上げが激減した。 その事態を知った会社はメガネ事業を撤退する事を決め… 廃業となったのだ。 俺に品質保証と言う… 仕事を会社は俺にさせ… 俺は精神疾患になった。 俺の怒りは抑え切れない。 そんな中… 俺が居たメガネ事業が廃止となったので… メガネ事業に携わっていた社員は会社を辞めるか、他の職場への異動と選択肢があり… 俺は会社を辞めずに他の職場への異動を選択した。 そして、俺の新しい職種が決まった。 職種は、今流行りの環境事業であり、品質保証と違いお客と接することは無い。 品質保証と違うことは… 製品からの利益で会社に寄与し貢献する事はなく… 環境事業は会社のイメージアップに貢献する事が仕事だと… 配属された職場の課員は俺が精神疾患だと知っているのだろうか? 環境事業の課長は最もらしい仕事の説明と仕事の取組み方を俺に話しているが… 会社のイメージアップを図るため? 他企業も進めているから? 俺にはそんな事だけが心に残った。 まあ、とにかく俺はまともに仕事と向き合うことなどタブーであり… どこの職場に移っても納得して仕事は受け入れる事が出来ない。 そう俺の根底は全てが「無」… 仕事への意欲など全く持っていない… そこで俺は考えた… 仕事をしなくても暮らせることを… それは会社への寄生で… 俺は引きこもり… それを会社に理解させることを…
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