《工事現場》

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《工事現場》

「ノミ」に刺されたが右脚は特に変化は無かった。 首筋の痛みと腫れは嘘のように治まり… 存在していた六文銭の跡はすっかり消えていた。 『何だったのだろう?』 『でも凄かったなぁ…』 『下の…』 俺はその言葉を発し… 昨日観た「クリハラサキ」をイメージしたが脳裏に… するとなぜか? 出掛けなければ行けない衝動にかられ… 脚が動きはじめた。 『どうなっているのだ?』 俺は特に気にする事も無くアパートのドアを開け表に出た。 するとまた微かではあるが「猫」の泣き声がアパートの1階から聞こえてきた。 俺はその「猫」の泣き声を気にしつつ脚が進み出し… 下町商店街方面へと向かう事となった。 『そうだなぁ…』 『夕飯の惣菜でも…』 独り言を呟きながら歩き出し… 商店街付近にある5階建てのビルが観えはじめた。 近くまで来るとそのビルは足場が組まれていて… ビル側面の塗装工事を行なっていた。 俺は特に気にかけていなかった。 しかし… 誰かが俺の耳元で囁いた… 『許さないで…』 『殺すのよ!』 俺はその声が耳に入ると意識が薄れ… 気がつくとアパートの中にいた。 そして目を開くと… 頭が割れるように痛い… どのぐらい眠ってしまったのか? 昨日の経緯を確認してみたが… やはり、商店街に惣菜を買いに行く途中だった事… それ以外は記憶に無く… 頭痛が激しく… 身体を起こす事が出来ない。 無理に起こすと激しい頭痛から吐き気を模様し… 吐き気により嗚咽していた。 『駄目だ…』 『身体を起こす事が出来ない…』 再び「猫」の泣き声が聞こえて来た。 その泣き声は、昨日までと違い誰かを威嚇する声であった。 すると俺の部屋の呼鈴ブサーが鳴った… 「ピンポン…ピンポン…」 俺は声を上げ対応しようと考えたが… 頭痛と吐き気から対応することが出来ない。 するとドアを叩く音が… 「ドン…ドン…」 「タダさん居られますか?」 俺を呼ぶ声が… そして… 「警察ですがお聞きしたい事が…」 しかし、俺は対応出来ず警察は去っていった。 俺は頭痛と吐き気を堪え… 横になり… 『なんのようだったのかなぁ?』と独り言を呟いた。
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