六日目のリーザス

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六日目のリーザス

ー六日目のリーザスー 「確か最初は可哀そうに見えたんだよなー」 ーこれは助けた赤ちゃんのドラゴンによって、自身をドラゴンの姿に変えられてしまった旅人の物語であるー 「水晶龍の魔法」 "この呪いを受けたものはドラゴンになる" この世界では常識、通説という事になっている。 水晶をまとったドラゴンと視線、心を通わす事により体が同じく水晶龍へと変化していくのだ。 「あの赤ちゃんドラゴンは木に登りたがっていた」 「母親のドラゴンに追いつこうとしてー」 手を差し出すべきではなかったか、いや、あるいは... もう彼の、リーザスの体は水晶龍のそれと変わらないまでに変化していた。 「参ったよ、シェルダ」 リーザスは魔導士に問う。 「何よ。まだ一日残っているわ。」 「言い伝えの通りだとドラゴンになるのは一週間かかるって」 既にいくつもの呪いの解除を試みたが治る気配がない。 「会話が出来るのならまだ結構」 シェルダはそう言うと最後の解除魔法 "テラスペクル" の詠唱を始める 「シェルダの魔力を以てしても無理なのか?」 不安に駆られるリーザスをよそにシェルダの詠唱が終わる。 解除魔法「テラスペクル」 水の精霊「ラ=スぺク」の魔法力で呪いを掻き消すのである。 薄がかった緑色と青白い光の輪がリーザスを包み込む。 次の瞬間「ぼわっ」と言う音がしてリーザスは煙に包まれた。 「これで効かなかったら、ダメね」 シェルダの厳しい言葉である。 「有難う、シェルダ」 「いいえ、リーザス」 新たなる水晶龍の誕生の一日前のやりとりであった。
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