バラの告白~言ノ華《ことのは》探偵・六華《りっか》~

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 そう思うと、もう今は恐怖しか感じない。 「それじゃ、三本目からは?」 「それも愛の告白と似たり寄ったりですね。三本が『愛しています』と『告白』、四本が『死ぬまで気持ちは変わりません』、五本が『あなたに出会えたことの心からの喜び』、六本が『あなたに夢中』と『お互いに敬い、愛し、分かち合いましょう』……続けます?」 「うわぁ……それって夫婦とか相愛の恋人同士でやるならともかく、正体不明の男からやられたらマジ、ストーカーですね」  彩音が思い切り顔を(しか)める。あとからやって来た川村は、表情を変えないまま佇んでいた。 「じゃっ、九本からいきなり十二本になったのは?」 「十本、十一本には特に意味付けがされてないようで、俺も聞いたことはないですけど……」  六華は言いさして、同様に花に詳しいらしい川村へ、意見を求めるように視線を転じる。すると、川村も「自分もその本数については知りません」と首を振った。  六華は小さく頷いて、志史に目を戻す。 「九本は『いつもあなたを想っています』と『一緒にいてください』、十二本は、『私と付き合ってください』の意味ですね。で、ここにある赤い花束のほうは二十一本『あなただけに尽くします』、黒の花束は二十四本ありますから『一日中想っています』。黒バラの花言葉は先ほど言った通りですので……」 「うわー、ヤバい、ヤバいよ(ふみ)ちゃん!」 「……ですね……」  春先で、しかも窓際の席で、気温的にはポカポカしているはずなのに、志史の背は完全に凍り付いた。  『あなたはあくまで私のもの』か、『決して滅びることのない愛』か、『永遠の愛』プラス『一日中想っています』の複合技? (無理! 無理無理無理!)  脳内で言いながら、志史は力一杯首を横に振った。  仮に、百歩譲って相愛の相手だったとしたら分からないが、正体不明の男から言われるのは重いを通り越してひたすら怖い。 「まあ、バラを送ってくるだけならまだしも、行動に移ったらちょっと問題ですよねぇ……」
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