みよちゃんと宇宙人

3/3
前へ
/3ページ
次へ
『ただいま!』 『あ、お母さん!』  それから暫くして、お母さんがお仕事から帰ってきました。みよちゃんはお母さんに、今日あった出来事をお話します。 『お母さん、お母さんのお花をひっこぬいちゃって、ごめんなさい。でも、宇宙人さんにどうしてもあげたかったの』  お母さんは、みよちゃんを叱りませんでした。しかし。 『まあ、大変!フクジュソウをあげてしまったの!?あの花には、毒があるのに!』 『ええ!?』  みよちゃんは、知りませんでした。みよちゃんの持っているこども植物図鑑にも、花言葉の図鑑にも、お花の毒のことは書いてなかったからです。お花を食べることはないから、書いていなかったのかもしれません。  フクジュソウはとても可愛いお花を咲かせる上、とても素敵な花言葉を持っています。けれど、お花や茎、葉にはとても怖い毒があったのです。 『どうしよう!うちゅうじんさん、うちゅうじんさん!しっかりして、目を覚まして!』  宇宙人さんが、眠ったまま起きなくなってしまったのは。自分があげたお花の毒のせいなのではないか。みよちゃんは泣きながら、宇宙人さんが寒くないようにタオルでくるんで、一生懸命あっためてあげることしかできませんでした。  自分のせいで、宇宙人さんが死んでしまったら。一体どうすればいいのでしょう。  もっとちゃんとお勉強をすればよかった、とみよちゃんは自分を責めました。  けれど。 『みよちゃん、おはようございます。みよちゃんのおかげで、私は元気になりました』  宇宙人さんは、しばらくすると目を覚ましてくれたのです。みよちゃんが泣きながら謝ると、宇宙人さんは言いました。 『私達はお花を栄養にしますが、正確には“お花に込められた素敵な気持ち”を栄養にしているのです。みよちゃんは、素敵な花言葉を持つ花を選んでくれて、とても優しい気持ちで私にお花をくれました。だから、毒があっても私は大丈夫だったのです。本当にありがとう。どうか、泣かないで』  勉強をして、知識を身につけることはとても大切なことです。  けれど一番大事なことは、優しい気持ちで誰かと接することなのでしょう。  宇宙人さんに、みよちゃんはとても大切なことを学びました。  やがて宇宙人さんは、みよちゃんにお礼にお花の種をくれて、宇宙船を直して旅立って行きました。  それは、この地球にはない、一輪だけの特別なお花です。みよちゃんは、そのお花のお世話をしながら、考えました。 ――このお花の花言葉は、“優しい気持ち”にしよう。大きくなっても、このお花を思い出して、私がずっと優しい気持ちでいられるように。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加