お飾り王妃だった私は、本当の愛を知る

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「で、話は戻すけどさ。……俺、フライアに近づきたいから会いに来ているんだよ」 「近づきたい、とは?」 「はぁ~、鈍い。ほら、お前俺に対して一線引いてるだろ? だからだよ。ちょっとでも近づけねぇかな~って思ってんだけれど?」  そうおっしゃった後、ブラッド様はご自身のお顔を私の方にグッと近づけてこられました。さらに、私の手を握られてくる。私は自分の手を何とかして引っ込めようとしますが、ブラッド様の方が力が強くて引っ込められません。 「ま、気持ちが伝わってないなら、いみねぇか。フライア、真剣に聞け」 「……はい」 「――俺は、お前が好きだよ。初めは確かにコイツを助けなくちゃ、って思ったからだった。けどさ、関わるにつれてお前のことを好きになっていった。惹かれていった。婚約者にして間違いないって思った。これでも、分からない?」  優しく問いかけられて、私は首を横にブンブンと振る。そこまで言われて、分からないわけではない。そこまで鈍いわけじゃない。私の顔が真っ赤に染まって、熱が溜まっていくのが分かる。だって、今までこんな風に「好き」なんて言われたこと……なかったから。 「よし、分かったならいい。フライアはどう? 俺のこと、嫌い?」  さらに、ブラッド様が私に対してそう問いかけられる。しかし、私は何と答えたらいいかが分からなかった。確かに、ブラッド様と一緒にいると胸がどきどきとすることがある。でも、これが本当に恋なのかどうかは分からない。だけど、嫌いではないということだけはわかる。だって、イーノク様に向けていた感情とは全く違うから。 「好きか嫌いか、と問われてもまだわかりません。ですが……嫌いでは、ないです」  だから、今の私に答えられるのはそれだけだった。好きか嫌いか、と尋ねられて嫌いではない、という言葉は回答に入るのかどうかは分からない。それでも、それが今の私の精一杯。今はそれでも……良いです、よね?
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