お飾り王妃だった私は母国の現状を知り、公爵様と一歩進む

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「そっかそっか。じゃ、そういうことにしておいてやる。……なぁ、話は変わるけどさ、フライア」 「っつ!」  そんな前置きと共に、ブラッド様が私の顔をまじまじと見つめられる。その表情などがすべてかっこよく見えてしまって、私の心臓がいきなりバクバクとうるさくなり始める。どうしよう、どうしよう。これって、どんな反応をすればいいの? 私がそう思っている間に、ブラッド様が私の額とご自身の額を合わせてくる。 「……そろそろ、俺的にはキスぐらいしてもいいと思うんだけれど?」  そして、そのお言葉である。確かに、私とブラッド様が共に過ごし始めてかなりの日が経った。だけど、ブラッド様は私に無理に触れようとはしない。手を握られたりするだけだ。……キス、ですか。私にも一度だけ経験があります。とは言いましても、イーノク様との結婚式でした形式的なものだけですが。 「……ブラッド、様」  だから、こんな風に心臓がバクバクとうるさいことはなかった。それに、ブラッド様とのキスだったら不快ではない気がするのだ。だからこそ、私はただ首を縦に振っていた。 「良いってこと?」  ブラッド様が、再度私の気持ちを確認される。それに、私はまた首を縦に振っていました。  そして……次の瞬間、私はブラッド様に口づけされていました。それは、イーノク様と行った形式的なものではなく、愛情が伝わるようなもの。私の心を、少しばかり満たしてくれるような。そんなものでした。
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