お飾り王妃だった私は、公爵様のご両親と会う

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 ブラッド様のご両親、先代のルーベンス公爵夫妻について私はあまり知らない。そりゃそうだ。だって私はフロイデン王国の人間ではないのだから。ただ、社交界のファッションリーダーだった夫人と、凄腕の経営者だった公爵というお話しか知らない。そもそも、ブラッド様はあまり私にご家族について教えてくださらないのだ。  翌日。私はグレッタとイルゼによっていつも以上におめかしをされていた。初め、私は先代公爵夫妻にお会いするつもりはなかった。しかし、ブラッド様に婚約者なのだから会え、と言われてしまったのだ。確かに、婚約者だったら義理の両親にご挨拶をするのは当たり前だろう。だが、私にとってこの婚約は未だに現実味を帯びていないもので。だからこそ、躊躇ってしまっていた。 「はい、どうぞ」  鏡に映る私は、いつも以上に健康的だった。いや、ルーベンス公爵家にやってきてからというもの私は確実に健康になっている。目の下の隈を隠す必要もないし、体型も標準に戻っている。だからきっと、特別なことはしていないのだろう。  本日のドレスは明るいオレンジ色だった。シンプルなものだけれど、ところどころに装飾が施されており、高価なのは一目でわかるようになっている。これは私がルーベンス公爵家にやってきてからすぐに仕立てたものだ。私もこのドレスを比較的気に入っていた。 「フライア様。先代様がご到着されました」  それから数分後。執事が私にそう声をかけてくれる。その瞬間、どうしようもない気持ちが私の心を襲った。これでも私は一度結婚している。そして、離縁している。そんな女性を大切な息子の嫁に、と認めてくださるだろうか。前だったら、きっとそんなことは思わなかった。でも、今の私は少しずつブラッド様との生活が楽しくなっている。この人とだったら、いい関係を築けるのではないかと期待してしまっている。だからこそ、認められなかったらどうしようという気持ちになってしまっていた。 「フライア様。大丈夫ですよ。フライア様ならば認められます」  私の気持ちをわかっていたのか、イルゼがそう声をかけてくれる。使用人一同には私の前の結婚生活のことをすべて話してある。そのため、受け入れてくれているのだけれど……。貴族なのだから冷めた夫婦関係ぐらい我慢できたのではないか? そう思ってしまうのだ。 (……大丈夫、よね)  そう心の奥底で唱えながら、私はゆっくりと立ち上がった。 **
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